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NO.001
無限の――
無限の残骸。実力伯仲だった二名のマスターの戦いの末路。
勝者を輩出する事なく、
敗者を決定する事なく、
ただ、戦いに破れたそれぞれの遺体が積み重なる無人の第六層。
1000年前の聖杯戦争で遠坂リンとラニ=Ⅷはこのフロアで対決したが、
その結果は完全なる引き分けだった。
互いにサーヴァントを失い、互いに致命傷を与えた両名は、
『勝者でもなく敗者でもない者』としてカウントされてしまった。
その後、トワイス・ピースマンの手で聖杯戦争が停止し、
ムーンセルは六層でもっとも優れたマスターであるリンとラニを
フロアマスターとして選んだ。
死の直前にある両者はフロアの核として採用され、
六層は彼女たちの世界に再構成された。
リンとラニが自分たちの状態(フロア化している)事を
把握するまで数十年のラグがあり、
その間、六層にいた数少ないマスターたちは七層に向かったか、下層に避難した。
死の直前でフロアと同化したリンとラニの本体(オリジナル)の意識は、
いまだ『聖杯戦争』のただ中にある。
彼女たちは霧のかかった意識のまま、本能に従い、
代理となる分身(アバター)を作成。
勝敗を明らかにする為、戦闘を再開したのだが、
何年、何十年、何百年と戦いを繰り返しても、
彼女たちが勝者としてフロアから開放される時は来なかった。
500年の殺し合いが続き、彼女たちもようやく状況を諦めた。
自分たちではもう判定は覆らない。
リン(ラニ)を殺したところでラニ(リン)が勝者になる事はない。
彼女たちが『勝者』か『敗者』になる方法はただ一つ。
第六層まであがってきたマスターと戦い、
これを倒して勝者としてカウントされるか、
倒されて敗者としてカウントされるかだけである。
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NO.002
分身(アバター)
リンとラニの今の姿。数百年にも及ぶ、自己改造と自己強化のなれの果て。
フロアとなった彼女たちは生体工場となり、
ライバルであるリン(ラニ)を上回るため自身の電脳体を改良し続け、
その果てに自らをサーヴァント化した。
すでにサーヴァントを失っていた彼女たちは、かつて契約していた英霊の要素を
自身の電脳体に植え付け、融合させている。
その有様は成長というより、工場で出荷される兵器のようなもの。
自己改造は本体(オリジナル)そのものから始まり、
彼女たちは生きたまま違うものに組み替えられる痛みと恐怖を
幾度となく繰り返し、今の最適解の電脳体に落ち着いた。
長いトライアルの末、
リンはスキルに特化したサーヴァントスタイルを選び、
ラニはパワーに特化したサーヴァントスタイルを選んだようだ。
各階層でハクノとセイバーに協力していたのは、
六層から下層に向けて派遣されたこの分身である。
SE.RA.PHは一方通行の為、一階層にひとりずつ分身を派遣していた。
その目的は言うまでもなく、
『新しいマスター』を六層にまで到達させる為だった。
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NO.003
心臓世界アストライア
第六層の中心にあるドーム。
リンとラニの本体が安置されており、
分身たちはこのドームに入る事を本能的に恐れている。
いかに代理といえ、分身(借り物)が本物に近づき、
これを直視しようとした時、
自己矛盾により砕け散る可能性があった為だ。
また、分身たちでは本体に干渉する事はできないため、
自殺する事も叶わなかった。
フロアの心臓部分であり、
この天秤の上からどちらかが欠けた時、第六層は崩壊する。
分身たちは消滅の際、蓄積した情報・記憶を本体に送り届ける。
分身たちの行いはすべて、
眠り続ける本体にフィードバックされる構造になっている。